受験生サイトを全面再設計。オープンキャンパス申込数を前年比168%へ伸ばした神奈川工科大学様
はじめは「受験生向けページの一部を見直したい」というご相談でした。行動データを確認すると、離脱は特定のページではなくサイト全体の情報の並び方から起きていました。改修範囲を広げ、受験生が読む順番からつくり直しています。
オープンキャンパスクリック率
150%
前年同期比
流入ユーザー
160%
前年同期比
打ち合わせ回数
12回
結論
直したのはデザインではなく、受験生が情報を読む順番でした
ページ単位の見た目を変えるのではなく、受験生が大学を理解していく順番にサイト全体を並べ替えたことが、申込数の変化につながりました。
ご相談は受験生向けページの一部改善でした。しかし行動データを見ると、受験生は特定のページでつまずいているのではなく、知りたい情報を探している途中で離脱していました。
そこで改修範囲をサイト全体へ広げ、「大学を知る→学びを知る→学生生活を見る→入試を確認する→イベントへ申し込む」という順番に情報を並べ直しました。撮影もこの構成から逆算して設計しています。
結果として、申込ページまでたどり着く割合は14.2%から23.8%へ、オープンキャンパスの申込数は前年同期比168%になりました。
相談前の状況
「どこを直せば申込が増えるのか」が判断できない状態でした
アクセス数は一定にあるのに申込が伸びない。ただ、どのページが原因なのかを判断する材料がなく、改修範囲を決められない状態が続いていました。
最初のご相談は「受験生向けページの見せ方を変えたい」という内容でした。ご担当者様の中では、トップページのデザインが古く見えることが原因ではないか、という仮説がありました。
一方で、その仮説を裏づけるデータは手元にありませんでした。デザインを変えても申込が増えなければ、次に何を直すべきかが分からなくなります。学内の予算取りも一度きりです。
オープンキャンパスは、受験生が大学を選ぶ過程で最も大きな接点です。申込に至らなかった受験生が何を見て離れたのかが分からないまま、次の年度を迎えることが続いていました。
最初に確認したこと
デザイン案をつくる前に、受験生がどこで離れているかを見に行きました
GA4、Search Console、ヒートマップ、既存のページ構造の4つを突き合わせたところ、離脱は特定のページではなく「探している途中」で起きていました。
確認したのは、受験生がどのページから入り、どの順番で読み、どこで離れているかです。合わせて、検索から来る受験生がどんな言葉で探しているかも見ています。
分かったのは、学部・学科、学生生活、入試、イベントの情報が別々の入口に分かれていて、受験生が同じ階層を何度も行き来していたことでした。大学の魅力を理解する前に、情報を探す作業で疲れて離れていました。
スマートフォンでは特に顕著で、離脱率は52.4%。申込ページまでたどり着いていたのは14.2%だけでした。
- 確認したデータ
- GA4の遷移経路とスマートフォン離脱率、Search Consoleの検索語句、ヒートマップの読了位置、既存サイトのページ構造
- 分かったこと
- 離脱は特定ページの問題ではなく、情報が4つの入口に分散していることで起きていた
- 決めた方針
- 改修範囲を一部ページからサイト全体へ広げ、受験生が読む順番から設計し直す
最も重要だった判断
一部ページの改修という当初のご依頼を、その範囲では解決しないとお伝えしました
分析結果をお見せして、ご依頼のままページ単位で直しても離脱の原因は残ることを説明し、サイト全体の情報設計から着手する方針に変更していただきました。
受注できる範囲でそのまま作れば、納品は早く済みます。ただ、原因が情報の並び方にある以上、ページの見た目だけを変えても申込は増えません。
行動データと画面を並べてご説明し、改修範囲を広げる判断をいただきました。この時点で予算とスケジュールを組み直しています。
当初のご依頼のまま進めた場合
納期は短いが、原因は残る
- 対象は受験生向けページの一部のみ
- 見た目は新しくなる
- 情報が4つの入口に分散したまま
- 受験生は同じ階層を行き来し続ける
- 申込が増えなかったとき、次の打ち手が分からない
実際に採用した進め方
範囲は広がるが、原因に手が入る
- 対象はサイト全体の情報設計
- 受験生が読む順番からページ役割を決め直す
- 入口を1本にまとめ、迷いを減らす
- 撮影とデザインを構成から逆算する
- 公開後に導線を調整できる状態にする
施策1|情報設計
大学側の組織図ではなく、受験生が知りたくなる順番でページを並べ直しました
学部・学科、学生生活、入試、イベントがそれぞれ独立していた構造をやめ、受験生の理解が進む順に1本の流れとしてつなぎました。
改修前は、トップページから4つの入口へ分岐し、それぞれの中で完結する構造でした。受験生は「学びを知りたい」と「入試を確認したい」を行き来するたびにトップへ戻っていました。
改修後は、大学の特色を知り、学部・学科の学びを見て、学生生活の様子に触れ、入試方式を確認し、オープンキャンパスに申し込む、という順番に並べています。各ページの末尾には次に進む先を明示しました。
Before|受験生の閲覧順序
入口が4つに分かれ、行き来が発生
- トップページ
- 4つの入口のいずれかへ分岐
- 各入口の中で完結
- 別の情報が必要になるとトップへ戻る
- 探している途中で離脱
After|受験生の閲覧順序
理解が進む順に1本でつながる
- 大学を知る(特色・雰囲気)
- 学びを知る(学部・学科)
- 学生生活を見る
- 入試を確認する
- オープンキャンパスへ申し込む
施策2|デザイン
メインビジュアルは方向性の異なる3案を出し、選ばれなかった案の理由も残しました
第一印象を決めるメインビジュアルは1案では判断できないため、狙いの異なる3案を用意し、比較したうえで決めていただきました。
3案は、学生の表情を主役にする案、キャンパスの環境を主役にする案、学びの内容を図と文字で伝える案でした。それぞれ、どの受験生に届きやすいかを添えて提示しています。
採用されたのは学生の表情を主役にする案です。オープンキャンパスに来る前の受験生が最も知りたいのは「どんな人が通っているか」だという、ご担当者様の実感が判断の決め手になりました。
選ばれなかった2案も記録に残しています。次年度に方向性を見直すとき、一度検討した案を再び議論せずに済むためです。
- その時点の問題
- 1案だけを見せると「良い/悪い」の感想しか出ず、なぜその方向にするのかが決まらない
- 判断
- 狙いの異なる3案を並べ、届く相手の違いで比較してもらう
- 変更したこと
- 学生の表情を主役にする案を採用。写真の面積を広げ、文字量を減らした
- 効果
- 方向性の議論が1回の打ち合わせで決着し、以降の調整が細部に集中できた
施策3|撮影
撮影は、完成後のページのどこに置くかを決めてから内容を設計しました
きれいな写真を撮ってから使い道を考えるのではなく、新しい構成のどの位置に何を伝える写真が必要かを先に決め、そこから撮影内容を組み立てました。
受験生向けサイトでは、写真が大学の第一印象をほぼ決めます。ただ、撮影を先に済ませてから構成を考えると、必要な画角の写真が足りないことが起こります。
今回は情報設計を終えた段階で、各ページのどこに写真が入るかを一覧にしました。そのうえで撮影場所、被写体、画角を決め、当日の進行表まで作成しています。
掲載位置を決める
新しい構成の各ページで、写真が入る位置と役割(雰囲気を伝える/学びを説明する/人を見せる)を一覧化しました。
情報設計の完了後
撮影内容を設計する
位置ごとに必要な撮影場所、被写体、画角を決め、横位置・縦位置の別まで指定した進行表をつくりました。
撮影の2週間前
撮影する
進行表に沿って撮影。現場で追加が必要になった構図もその場で判断し、後から探し直す作業を減らしました。
撮影当日
デザインへ反映する
撮影した写真に合わせて余白と文字量を調整。写真とレイアウトを別々に決めない進め方にしました。
撮影の翌週
施策4|進行
確認者が多い大学案件でも止まらないよう、判断項目を資料化しました
内容が良くても、学内で何を確認すればよいか分からなければ進行は止まります。判断が必要な項目だけを抜き出した資料を毎回添えました。
大学のWebサイトは、広報だけで決められない項目が多く含まれます。学部ごとの記載内容、入試情報の表現、写真に写る学生の許諾など、確認先が分かれます。
そこで提出物には、そのまま学内で回せる確認資料を添えました。決めていただきたい項目、選択肢、決めない場合に起きること、回答期限を1枚にまとめた形式です。
ご担当者様が説明資料をつくり直す手間がなくなり、確認の往復が減りました。
施策5|公開時の移行
構成を変えるとURLも変わるため、旧ページと新ページの対応表を先につくりました
情報設計を変えるとページのURLが変わります。検索から来ていた受験生と検索エンジンの両方が新しいページへ進めるよう、対応表を作成してから公開しました。
対策せずにURLを変えると、検索結果から来た受験生が目的のページにたどり着けません。これまで積み上げてきた検索評価も失われます。
旧サイトの全ページを書き出し、新しい構成のどのページに対応するかを1件ずつ決めました。対応先がないページは、最も近い上位ページへ寄せています。
表は横にスクロールできます
| 旧サイトのページ | 新サイトでの受け先 | 処理 |
|---|---|---|
| 学部・学科の一覧 | 学びを知る | 転送設定 |
| 学部ごとの個別ページ | 学びを知る/各学科ページ | 転送設定 |
| キャンパスライフ | 学生生活を見る | 転送設定 |
| 入試情報の一覧 | 入試を確認する | 転送設定 |
| 対応先がない旧ページ | 最も近い上位ページ | 上位ページへ転送 |
公開前に全件の転送を確認し、公開後もSearch Consoleでエラーが出ていないかを追跡しました。
施策6|公開後
公開後の行動を見て、申込ボタンの位置をもう一度調整しました
公開した時点を完成としませんでした。実際の閲覧データを見て、申込ボタンの出し方を1か月後に修正しています。
公開後のヒートマップを見ると、学生生活のページを読み終えた受験生がそのまま離脱していました。次に進む導線はページ末尾にありましたが、読み終える前に画面を閉じている人が一定数いました。
そこで、記事を読み進めた途中の位置にも申込への導線を追加しました。この変更後に、申込ページへの到達率がさらに伸びています。
結果
申込ページへの到達率が上がり、オープンキャンパス申込数は前年比168%になりました
情報設計の変更で申込ページまで進む受験生が増え、スマートフォンでの離脱が減りました。公開後の導線調整を加えた結果、申込数は前年同期の1.68倍になっています。
申込ページ到達率の改善は、情報設計と公開後の導線調整によるものです。スマートフォン離脱率の改善は、入口を1本にまとめたことと写真の見せ方の変更が効いています。
申込数は、到達率の改善に加えて、検索から入ってきた受験生が離脱しなくなったことの積み上げです。
オープンキャンパス申込数
前年同期を100とした指数
申込ページ到達率
サイト訪問者のうち申込ページへ到達した割合
スマートフォン離脱率
低いほど良い
お客様の声
「一部を直す話のはずが、途中で前提が変わりました」
最初は、受験生向けのページを何ページか作り直してもらうつもりで相談しました。正直、すぐデザイン案が出てくるものだと思っていたんです。
そうしたら、まずデータを見せてくださって。うちが直そうとしていたページは、実はそんなに見られていなかった。読まれずに離脱していた場所は別にありました。この時点で、依頼した範囲では解決しないと言われて、少し驚きました。
範囲を広げるということは、学内の調整も増えます。ただ、毎回「今回決めていただきたいのはここです」という資料を用意してくださったので、私が説明資料をつくり直す必要がありませんでした。ここは本当に助かりました。
撮影も、当日ふわっと撮るのではなく、どのページのどこに使う写真かが決まった状態で臨めたので、迷いがなかったです。
公開して終わりではなく、1か月後に「ここで離脱しているので導線を足しましょう」と提案が来たのも印象に残っています。申込数が前年より増えたので、来年度も続けてお願いする予定です。
神奈川工科大学 ご担当者様
この事例から
この事例から、自社に置き換えられること
-
改修範囲は、仮説ではなく行動データで決める
「トップが古いから」という感覚での判断は、外れると次の打ち手が分からなくなります。どのページで離脱しているかを先に見れば、直す場所と直さない場所を切り分けられます。
-
情報が分散していると、デザインを変えても離脱は減らない
入口が複数に分かれているサイトでは、利用者が同じ階層を行き来します。見た目より先に、読む順番が1本につながっているかを確認してください。
-
確認者が多い組織では、判断項目の資料化が進行速度を決める
制作物の品質と、社内で決裁が回る速さは別の問題です。何を決めてほしいかを1枚にまとめるだけで、確認の往復は減らせます。
FAQ
よくある質問
既存サイトの一部ページだけでも改善を依頼できますか?
はい、ご相談いただけます。ただし今回のように、行動データを見た結果「その範囲では解決しません」とお伝えすることもあります。まず対象ページと周辺の閲覧状況を確認し、一部改修で足りるのか範囲を広げるべきかを整理してご提案します。
分析だけをお願いすることはできますか?
できます。GA4、Search Console、ヒートマップの確認と、どこから直すべきかの整理までを単独でお受けしています。分析結果をご覧になったうえで、制作を依頼するかどうかを判断していただいて構いません。
写真素材が揃っていない状態でも相談できますか?
はい。今回も撮影企画から担当しています。サイトのどのページのどこに使うかを先に決めてから、撮影場所、被写体、画角を設計します。手元の素材で足りる部分と、撮影が必要な部分の切り分けからご相談ください。
学内の確認に時間がかかる案件でも進行を任せられますか?
はい。今回は提出物ごとに、決めていただきたい項目と選択肢、回答期限をまとめた確認資料を添えました。ご担当者様が説明資料をつくり直す必要がなくなるため、確認の往復を減らせます。
リニューアルで検索順位が下がる可能性はありますか?
URLやサイト構成が変わる場合は可能性があります。今回は旧サイトの全ページを書き出し、新しい構成のどのページへ受けるかを1件ずつ決めてから公開しました。公開後もSearch Consoleでエラーの有無を追跡しています。
どこを直せば成果につながるのか、分からない状態からご相談ください
サイト全体の行動データを確認し、直すべき箇所と直さなくてよい箇所を切り分けてお伝えします。分析だけのご依頼にも対応しています。